由伸と九里、遊び心に躍る
どっちが上手(うわて)? えっ、横手も?! *引用のイタリック体も含め、太字、赤字はすべて、筆者によるものです
私が購読している毎日新聞。西部本社発行の7月21日付17面スポーツ欄トップに「強気の荒れ球 九里熱投」という極太見出しが躍った。その左隅に目をやると、こっちも、やや小さめだが「省エネ由伸 10勝目」という快調な見出し。試合は見られなかったのだが、山本由伸の、ダイヤモンドバックス戦で打ち込まれた後の、名誉挽回を期しての登板での勝利のニュースだった。

偶々どちらも投手が主役の記事。野球はピッチャー、と言うから、珍しいことではないだろうが、今回これを取り上げる理由は――或いはこれ迄の山本に関する当欄での私の論評(ナンクセ)を読んでいただいている方の中には、「強気の荒れ球」という語句にピーンと来られた方がおられるかもしれない――偶にだが山本投手が、低めとかの、ぎりぎりコース狙いがみな四球、四球で、球を置きにいく羽目にもなるような時は、もうやけのやんぱち、思い切り腕を振って、球のキレで勝負しろと、名投手相手に余計なお世話のアドバイスを送ってきた。奇しくもまさにそのことを、九里投手がやっていたようなので、驚いたのである。

記事には、こうある。「良くなかった。ストライクを取れる球が見つからなかった」。どうしたか。「逆に荒れ球を利用する気持で」開き直ってやった。ということは私に学ばれたかどうか分からないが、こうなりゃあやけくそ、「中盤は緩い変化球や落ちる球を駆使してアウトを重ねた。」これは、腕もちぎれよと、速い球で勝負に行くのではなく、力を抜いた腕を思い切りよく振って球に変化をつけた、ということなのだろう。更には人が悪いというか、突然、横からも投げた。6回表、先頭清宮を見逃し三振に打ち取ったシーン。その1球前、急に横手から投げ、哀れ清宮を空振りさせていた。以下は、YouTube BsTV オリックス・バッファローズ公式 2026/07/20からの引用。 アナ:これはサイドスローで空振りをとった後のインコース。解説:今のは九里からしたら、してやったりの三振ではないですか。アナ:そして万波ライトフライ。連敗ストップがかかったマウンドではあったんですが、どこか遊び心がある投球でしたね。解説:特に中盤ですね。
GoogleAI による概要:2026年7月20日の日本ハム戦(京セラD大阪)では、チームの連敗を止めるべく先発マウンドに上がりました。序盤は制球に苦しんだものの、「荒れ球を利用しろ」という厚沢投手コーチの助言をうけて大胆に腕を振るスタイルに修正。結果として7回を被安打3・無失点に抑え、今季7勝目を挙げて連敗ストッパーとしての役割を見事に果たしました。
片や山本由伸の方は、球数(102球)も少なく、つまり「省エネ」で完投勝ち、ということで「無駄な力みなく投げて行けた。いいコースにいっていたので早く結果球になり、いい投球につながった」とコメントしている。この中で注目すべきは、「いいコースにいっていたので早く結果球になり」という部分だろう。これは、どういうことか。ご本人が言われているので間違いないだろうが、もう「うーん」と唸って見逃すしかないような究極のギリギリでなく、つい手が出てしまう、恐らくはボール半個か1個程度甘めのコース(それを称して「いいコース」と言っている)にいっていたので、打ってくれた、つまり「早く結果球」になった、ということだろう。実際、副見出しにも「打たせて取って102球完投」とあり、三振の山を築こうと狙えば、3アウト取るのに最低でも9球を要するが、打たせてなら、3球で済む。完璧に抑え込むことを狙ってギリギリを突くより、はるかに効率がいいのである。効率がいいばかりか、四球、四球と出して、先日のダイアモンドバックス戦のような破局を見るようなところにはまる危険を回避できる。
しかし、である。甘めでもいいは、簡単なことではない、実は度胸が要る。それでも余裕というか、多少遊ぶ、スリルを楽しむような遊びごころで臨めば腕も思い切り振れ、2失点はしたものの、無四球、シーズンに於ける初の完投試合という快挙につながった。大事なことは、逃げの気持ち(安全を図り過ぎる気持ち)からどうしてもここだと、ギリギリのところに球を置きにいくのではなく、そこより多少外れても構わないから、とにかく思い切り腕を振って投げる、後は、運命の神に任せる、そんな多少スリルを楽しむようなこころ構え(遊び心)が、投球には必要なのだいうことなのである。
山本は当然こういう投げ方も心得ていた。しかし、三振の山を築き、完全に抑え込む誘惑に引きずられることもあるのだろう。そういえばダイアモンドバックス戦の立ち上がり、初回によく失点する山本であるが、この日は完璧な立ち上がりだった。
