「バカってなによ」⑴
何てタイトル!「プロのバカ」って、なんのこっちゃ? と言われそう。だいぶ前には、「なによ、バカって、わたしのこと?」とスナックママに話したら、からかわれました。
それは……とっても古い話で、むかしむかし日本テレビの朝のワイドショー番組に「ルックルック こんにちは」というのがありました。初代司会の沢田亜矢子さんの親しみ易い笑顔も良く、午後からの勤めだった私は、楽しみに視ていたのですが、私が特に強い関心を持って視ていたものこそが、中年の主婦をつれてきて変身させて見せるという、その名も「貴女もトップレディー」というコーナーだったのです。
幾ら何でも自信家の女性にしても、気恥ずかしくなるような看板。それでも登場の勇気ある方々とは? 大体が、レディーには違いないとしても、永年家庭に埋没して、いささか老け込んでしまったような、オバサン風の方が殆どだった。
しかし私個人は審美眼があり過ぎるのでしょうか、そのお顔を拝見する中、薄化粧だけのくすぶりの中からも、ほのかに起ちあがってくる、その人なりの美しさ、貴賓というものが感じられてきて、悪くない、と思うことが多かった。いや、番組の狙いからして、どう磨いても光らぬ石を持ってくる筈はなくて、恐らく若い時には、ボーイッシュであるとか、細目の優しい顔立ちとか、それぞれの個性でなかなかに魅力的であったに違いありません。
さてその変身を担うのは、ファッションスタイリスト、ヘアーデザイナー、メーキャップアーティストと、その呼び方はともかく三部門の一流プロたち。些か衰えた嘗ての美女相手の、いかにも超一流らしい、鮮やかな手際の仕事ぶりが紹介されてゆきます。忽ち印象一変のレディーたち。そして最後、これ迄の彼女からすると飛び切り大胆な服装をまとって、変身完成! 果たして「トップレディー」に?
お披露目の時がやってきます。きょうのこの番組の為に付いてきていた家族や親しい人との対面! その人達の前で、グルッと回って見せたりもします。一同揃って目ん玉まん丸の驚きの表情。余りの変貌ぶりに、思わず笑ってしまう人、口に手を当て、所謂口あんぐりを隠そうとする人もいます。
私もしばし口あんぐりでした。というのも、綺麗になられた、と言えば華やか過ぎる程で、確かにそうなのですが、地味なりにこの人らしい魅力として光っていたものが、どこかに消し飛んでしまっていたからでした。どうなっていたかと申しますと、髪形も大胆に、見事な迄にメーキャップを施し、キツイ香水を振りまいた如く女が匂ってくる、あの夜に花開く女性が出現していたのでした。
えーっ、これ!? (つづく)