斬り込み隊長小泉?

 今月2日、私はかねて知り合いの造園業者のK氏に電話をしていた。久しぶりに会った時に、最近は市なんかの公共工事の入札が抽選になることが殆どで、やる気を失う、と言う話を聞いていたからで、どうして抽選になるのか、そのやり方とはどういうものか、聞かせて欲しいと頼んだのであった。

 市に関係する業者でもない私がそんなことを聞く気になったというのも、農水省が備蓄米を放出するのに入札をし、高値をつけた業者に売り渡すことをしていたからであった。その言を信じるなら「米価を抑えたい」。こちらの期待では、沸騰する米価を断固冷ますべくやっていただいている筈なのに、水ではなく、絵画の値が高騰するのでいつも話題になるオークションにかけ、わざわざお湯にしてぶっかけるようなことをしている。当然、下がる筈もなく、マスコミは高値になるしくみ(入札)になっていることを失念して、量が少ないからではないのかとか(小出しにするのも問題、しかし一気に大量放出でも高値で落札なら同じこと)、的外れなことを言うばかり。やる方もやる方だが、騙される方も騙される方。マスコミは、即座にこれ、おかしくないですか、と指摘して良かったのでは。

 要は、熱いものに熱いものを掛ければ、なお熱くなる――これは小学生にも分る理屈。一体、なんなの! 人を馬鹿にしているというか、一寸考えれればインチキだというのがすぐ分るようなことを、米価高騰に泣く国民の前で公然と行っている。

 農水省の役人が言う。「買い入れ価格よりも安い値段で売り渡そうとすれば法律違反に問われる可能性がある(産経新聞――詳しくは後述)」

 誰がそんな値で売れなどと言いました? 明らかにどこかの利益団体の息がかかっているのではと疑われる、ひどい捻じ曲げ方。入札なしならダンピングに追い込まれてしまうの? 

 農水省だって、儲けて売ればいいじゃないですか、倉庫保管料とか、色々かかった費用に幾分上乗せしたくらいの、胸を張って適正価格と言える値段で。それでも、少しも高くは思われない、何しろ市場価格は、買い入れ価格の遥か上なのだから、そうなると、しかし引き合い殺到で大変なことに?

 いえ、それは、公平に(管理等の扱い能力の基準を満たす)どの業者も参入していいとした場合の話。ですが、大変なことだとしても、是非ともそうならないといけないと思われませんでしょうか。少しずつ全部の業者に、ともいかないだろうから、一定量を決めて、どこが引き取られるかは、抽選に。ここで抽選が出てくるわけですが、公平を期して売るのに、他にどういう方法があるでしょうか。

 造園業K氏の説明では、自治体が工事を発注する際には、積算価格が示されているので、どの業者が見積り計算しても、同価格になる、。だから、抽選で決着をつけるしかないと言うわけで、この方の抽選は、自治体が出来るだけ安く買いたい(建設したい)というケースでのこと。

 対するにお米の場合は逆に、国の資産に属するものを売るケースでのこと。公共用地を民間に売却する場合と違って、競争させてできるだけ高くを望んでいる訳じゃない。超法規も許されるかという非常事態に直面しているのであり、市場価格を下げたいと緊急投入するのだから、出来るだけ安くが望まれ、入札などしてる場合じゃないことは明らか。

 ただ注意すべきは、市場価格より遥かに安い値で仕込めたとなると、大儲けが期待できる訳で、決してそんなことはさせないように枠をはめることは当然。もう後は、特定業者だけに渡されるということがあってはならない、つまり、抽選により公平に分配される必要がある。これなら、誰からも文句は出ない筈。JAが、一俵も入らなかったと言っても、くじ運のないのを嘆くしかないと言う訳。

 どうして入札のことなんか聞くのかとK氏が言うので、抽選が必要な理由を説明したら、突飛な話と思えたのだろう、「私は専門でないので、お米のことは分りません」。一気に白けた。専門家じゃ、ない? おいおい、お宅では、お米食べないの。

 一般国民の認識がこんなものなら、いま世間に「お米売り渡しは抽選にするべし」、なんてほざいても虚しい、いよいよこちらは白ける破目になる、その中風向きが変り、疑問の声が芽生えてくるかも知れないと、少しタイミングを待つことにしたのだった、

 じりじりした思いで待つ中、その時は、一挙にきた。先にも引用した産経新聞(ネット)の5月19日付けに『備蓄米放出によるコメ値下がりを阻む入札制度 落札額高止まり、政府が『転売ヤー』に?」という記事が載ったのだ。以下、その記事からの抜粋。

「農水省によると、備蓄米の買い入れ価格は令和5年産米が60キロ1万2829円、4年産が1万1004円、3年産が1万2885円。備蓄米の落札価格は買い入れ価格よりも1万円程度上回っている。

「自民党の小野寺五典政調会長が14日に備蓄米の倉庫を視察した際、『国がもうけてどうするんだ(一説には、21万t売って280億円の利益とか――筆者註)』と発言するなど、備蓄米の放出で入札制度を適用することに疑問を呈している。」  

 やっぱりそうか、であった。更に翌21日にはテレビ「ゴゴスマ」での、橋下徹氏の発言が飛び出した。それを伝えるENTAME nextの記事から引用させていただくと、

「だいたい備蓄米をオークションにかけてどうするんですか。入札にかけるんでしょ。オークションって、どんどん値段が高くなっていくんですよ。(方法としては)逆ですよ。安い金額の指値にして、あとは抽選か何かでバッと配らなければいけないのに」

 この発言の直接のきっかけとなったのは、農水相のオウンゴールも疑われる、余りな発言(生活苦から、又刑務所に戻りたくて、ワザと何かしでかす人みたいに、もう大臣の職務から逃れたかったものか)だったが、願いかなって? この日(21日)の中に江藤氏は更迭された。

出典:小泉進次郎オフィシャルサイト

それならと私は民間人の枠で、個人的には全く好きでない橋下氏を農水相に、と訴えて官邸に乗り込みたかったのだったが間をおかず、これまた余りな発言が多い小泉氏が後任を託された。こりゃダメだ、と思った人も多かっただろう。ただ、余りな向こう見ずを発揮して、利益団体を中心にコールタールのようにねっとりからみあったかたまりを、ひょっとして分解させてくれないか。

 日本の農業に巣くい、その血を吸って生きているかのように言われたりもする団体と彼が闘ってきたことは、紛れもない事実、この人の特質を顕してもいよう。それあって、就任以来、余りなヨタヨタぶりが目につく首相も、彼をこの際抜擢したのである。早速新農相が持ち出したのは、「随意契約」というやり方、入札よりいいというのは感じとれるが、どうやって売り渡す業者が選ばれるのだろうか。ここはやはり非常事態、ということで、橋下氏が言う「安い金額の指値」私の言葉では「適正価格」で抽選、というのが、ベストではないだろうか。

 ともかく石破総理も後がない、土俵際での奮闘が求められることを充分意識した、起死回生を図っての一手だと、私には思える。根本的には新農相も言及していたように、今後は、思うだけお米を作って貰い、仮に余りでもしたら輸出に、への政策転換が必要なことは間違いない。

 とりあえずは、これから紆余曲折はあるだろうが、月5万の年金がすべてという人にも安心して買えるお米の値段に一刻も早く戻ることを、私も麵類ばかりの食事から解放されることを心から願って、この稿を閉じたい。

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